かあちゃん顔
内館牧子
横綱審議委員
初場所千秋楽・結びの一番
横綱朝青龍VS大関千代大海戦に
史上最多44本の懸賞が懸かり、
勝利した朝青龍は賞金132万円を手にした。
ところが、そのときの横綱の所作について
横審の内館サンがまたしても物言いをつけたそうな。
「酔っ払いが寿司折を
持つようなつまみ方は問題だ」だって。
ご祝儀袋の束が、あまりに分厚かったもんで
半分ずつ二列にしてヒモで束ねられていた。
その結び目を左手でちょいとつまんで持ち上げたのが
寿司折を持つように見えたらしい。あはは。
だけど、あんな束ね方がしてあったら他にどんな取り方があるって言うんだろう?
普段どおりに片手で上から鷲づかみするには幅と厚さがありすぎたぞ。
無理に取ろうとしてまごついたり、万が一取り損なって
落とすよりはスマートだったし、べつに問題ないんじゃないの?
内館サンの言ってるのは「酔っ払い」というのも含めて、
ほとんど言いがかりにちかい気がする。
だいたい、平成になってから日本にやってきたモンゴルの若者が、
昭和・高度経済成長期のサラリーマンの風俗を知ってるハズがないじゃん。
日本に住んで長いこのワタシも、ここ十数年
お土産の寿司折りをぶらさげて千鳥足で歩く
あの正調酔っ払いお父さんにお目にかかってない。
たぶん、回転寿司が普及したせいで、お土産としてあまり
有難がられなくなったせいじゃないかな。
それにお店のほうも、今ではビニールの手提げ袋にして
持たせてくれるのが一般的になってしまってる。
いまどきあの昔懐かしい愛すべき寿司折りブラブラの
酔っ払いお父さんにお目にかかれるとしたら、
志村けんのコントか相撲好きの女流脚本家が描く
ステレオタイプの家族ドラマだけかもしれないよ。
だから、朝青龍にそんなこと言っても、ちんぷんかんぷんで
意味がないよ、きっと。
★
で、本当のところはさ、アレだけ言っても左手で手刀を切る
いじっぱり横綱に文句を言いたいだけでしょ、内館サン。
44本の懸賞も、もちろん左手で受け取ってたからね。
でも、アレだけ言っても改めないのは、内館サンがアレだけ言うからだと思うな。
横綱が態度を改めたら、それは内館サンの忠告に従ったことになるじゃない。
それがしゃくにさわるんじゃないかね。
たとえば、母親がいくら口をすっぱく注意しても勉強をしない子どもは、
「勉強しなさい」という母親の命令に従いたくないから
意地で勉強しないという可能性がある。
つまり母親と権力争いしてる状態だと勉強したら負けになるもん。
そういう場合はあれこれ指図しないで、ほっときゃいいのにね。
その証拠に、朝青龍は今場所一日だけ
ちゃんと右手で手刀切った日があった。
それは初日の天覧相撲。
ははは。敬意を払うべきところ、というよりちゃんと相手を選んでるということか。
でもまあ、横審かあちゃんと
ワンパク横綱のやりあいは
それこそ家族ドラマみたいで面白いから、
どこまで続くか見てたいもんだ。
イラスト・文章の無断転載を禁止します/著作・松村宏