トホホ顔

立花隆

NHKスペシャル(11/5)

「サイボーグ技術が人類を変える」

で、メインキャスターを務めていた。

いやー、びっくりする先端技術の

最前線を次々紹介してくれるんで

21世紀の現実にドギモを抜かれっぱなしだったよ。

ホンモノの手と同じように五本の指を思い通りに動かせる義手や

ビデオカメラから脳に信号を送り、視力を取り戻す研究

人間の力を補助するだけでなく倍増させるパワー・スーツ

入力装置なしに、思考するだけでカーソルを動かしてパソコン操作ができるなど、

ようするに、夢物語だった脳と機械を直結する技術が

ブレイク・スルーして可能になったんだ。

5年前にはなかった「神経工学」というジャンルが

今、爆発的に発展しているそうな。

5年前といえば、新しい世紀に突入した時、

少年の頃夢見ていた未来のイメージに比べ

案外しょぼい現実にワタシはなんとなくがっかりした。

だけど、これはまさに21世紀の技術!

サイボーグ!夢の技術だ。

ところが、司会者本人は、新しい人類の地平を見渡した興奮というより、

むしろ呆然とたちつくしている感じに見えたんだよね。

軍事利用、武器開発という科学の悪用が

重い影を落としているからだろうか。

たとえばガンダムみたいなモビルスーツを着た兵士や

不死身のサイボーグ兵士も凄いけど、

リモコンで自由に動きを操作できるネズミを

アメリカが軍事費で開発している現実には

確かにワタシも暗〜い気分になったもんね。

もし完成したリモコンネズミに爆弾を持たせれば、

兵士にはまったく命に危険のない、

それでいて自爆テロ以上の必殺兵器になるじゃん。

うん、権力者の暗殺だってできる。

そしたら軍隊を使わずに、戦争に勝てるようになるかもしれない。

でも、立花サンが往年のアブラギッシュな迫力に比べて

画面でずいぶんしょぼくれちゃった感じがしたのは

「神経工学」技術が軍事利用されることを考えて

暗澹たる気分になったせいだけじゃないかも。

もっと、根本的な人間の本質に迫る問題かな。

現実に脳が機械とつながるということは

脳も複雑だけど、ただの機械にすぎないという

なんだかがっかりするような結論が出てしまうかもしれない。

たとえば、新しく発見された、脳の深部にある

「悲しみ中枢」と呼ばれる部位に直接電気刺激を

与えると、うつ病が改善されるんだって。

じゃあもし、「喜びのツボ」「幸福のツボ」みたいなのが発見されたら、

人間は人為的、電気的に幸福にすらなれてしまうのだろうか。

「人間ってそんなもんなの?」

学者にインタビューする立花サンのトホホ顔が印象に残った。

そうそう、その「印象」や「記憶」についても、

びっくりするような研究を紹介していたぞ

脳の海馬を極薄にスライスする。

一枚一枚を電子回路に置き換える。

それを積み重ねて、もとの海馬とそっくりに

組み立てなおしたチップを作ることで、

「記憶」を取り出したり、移植できるように

なるのではないかということだ。

他人の記憶をレンタルビデオみたいに貸し借り可能な

ソフトにしてしまう時代が来るのだろうか。

ハードウエアだけでなく、ソフトウエアも交換可能となれば

「私」や「個人」という概念も怪しくなってくるではないか。

人間の存在基盤が揺らいでしまう。

う〜ん・・・考えれば考えるほど途方にくれる。

たぶん鏡を見たら、ワタシも、今

立花サンみたいな表情をしてるかもなあ。




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