半月顔
忌野清志郎
テレビのニュースショーで突然、
安住アナウンサーが真顔になって
清志郎の訃報を読み上げた(5/2)。
夜の11時半くらいだったろうか。
★
自転車で深夜の道を走った。
涙をためたような半月が
夜空でうつむいていた。
★
同い年のマスターが
カウンターの向こうで待っていた。
81年、RCサクセションの武道館ライブの
熱狂の渦の中に自分もいた、というのが
自慢のマスター。
土浦でブレイク前のライブを
ガラガラの二階席で応援したのが
自慢のワタシ。
場所も環境も違うけど
それぞれ、青春時代の記憶と
RCサウンドが一体化している二人が
今夜はどんな表情したらいいか
カウンターを挟んで戸惑っている。
★
マスターの宝物、武道館ライブのテープを
何度も聴いて、献杯を何度も繰り返して
三時過ぎ、店を出た。
ひっそりと静まりかえった夜道を帰るとき、
初めて意味がわかった。
丸いカクテルグラスを
照明にかざして横から眺めると、
まるで今夜の半月のようじゃないか。
「ジンライムのようなお月さま」
夜空に半月を見つけるたび
これから一生、
清志郎を思い出すだろう。
イラスト・文章の無断転載を禁止します/著作・松村宏