純愛顔

マチルド

(オドレイ・トトゥ)

映画「ロング・エンゲージメント」を観に行ったよ。

大好きなジャン・ピエール・ジュネ監督の最新作。わくわく。

でも、大ヒットした『アメリ』と同じコンビなので、

ファンタジックな純愛映画かと思ったら、かなりシビアな戦争映画だった。

なにしろ第一次世界大戦下のフランスが舞台なんだけど

最前線の戦場の臨場感は、ちっとも手加減なし。

爆死する兵隊さんたちのむごい姿がこれでもかと出てくる。

前作みたいにオシャレで都会的なラブストーリーを期待して

観に行ったOLおねえちゃんたちは痛い目に合ったかもしれないなあ。

もともと、この監督はスイートなデザートを作るバテシエではないのよ。

フランス料理でいうなら野趣たっぷりのジビエ料理。

チーズで例えるなら、アオカビのブルーチーズ。

クセが強くて食べられないというヒトには無理にオススメしない。

だけど、あの独特の臭味とうまみが、たまらないのよ。

「デリカ・テッセン」以来、このジュネ監督の強いクセのある

映像、キャスティング、語り口が病みつきになっているワタシなのだ。

戦場シーンがハンパでないのはゼッタイなにかやるつもりなのだ。

主人公マチルダの恋人で、ジャニーズ系の美少年マネクは

地獄の戦場を離脱するため、自分でわざと指を吹っ飛ばした。

イタタ!でも刺激と臭味が強いのは、

下(舌)ごしらえだと思って、がまんがまん。

マネクは味方の一方的な軍事裁判で死罪に問われ

武器も持たずに敵のドイツ軍が待ち構える最前線に放り出される。

敵も味方もない。戦争の無意味な悲惨さが徹底的に描かれる。

がまん、がまん。それでも決してべとつかず、もたれない演出は

さすが名人ジュネ監督ならではの料理の腕ではないか。

このマネクの消息を自力で探し出そうという主人公がマチルダなのね。

絶望的な状況証拠、目撃証言がそろう中、

恋人の生存を決して疑わない、マチルダの強い意志が胸を打つ。

執拗な調査、懸命の捜索、ミステリーの謎解き。

そして、映画は感動のラストシーンを迎えるのだけれど、

戦争の悲惨と平和の幸福感を、どうやって象徴的に対比させるか、

どんな映像を見せてくれるか、想像もつかなかった。

ところが、これが、息をのむほど美しいのよ。

でも決して大げさじゃない。

むしろこれだけの大作の大団円にしては、

あっさりしすぎるくらい。


それは爆風に対して、そよ風だった。

硝煙の漆黒に対して、庭の陽だまりだった。

映像の魔術師ジュネ監督がラストに用意したのは

実にささやかで平凡な風景だった。

そのささやかさが、平凡さが、とてつもなくよい。

ワタシはもう無条件降伏。滝涙。

それはジュネ監督の


ブルーチーズの純情。




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