懲罰顔

JR西日本

 JR西日本では、ミスをした運転士や車掌には

「日勤教育」という名の

オソロシイ再教育と処分が待っているそうな。

なんでも内容や期間はそれぞれの職場長任せで、

草むしりや発声訓練、反省文書きなど

場合によってはかなり屈辱的な強制まであって

過去には精神的に追い詰められ日勤教育を終了した直後に

自殺した人もいるとか(01年)。

うーん。はたしてそれを教育と言っていいんだろうか。

ただの社内懲罰システムではないの?

懲罰に対する恐怖で社員を動かすというのは

まるで強制収容所送りの恐怖を使って人民を支配する

北朝鮮と大差ないね。

だいたい、懲罰による指導が教育的効果が高いというのは

迷信だ。

これは職場に限らず、学校でも家庭でもそう。

体罰・懲罰はマイナス効果や副作用が大きいので

教育には不都合だということを、

臨床心理学者(特にアドラー学派)たちが大昔から指摘している。

善悪や正誤の判断を学ぶだけだったらいいのだけれど、

懲罰教育を受けると、他にもいろいろ余計なことまで学んでしまう。

たとえばふたつほど不適切な行動のパターンをあげてみる。

ひとつは、罰を与えた権力者に対して卑屈な態度になるタイプ。

大人や上司の機嫌をうかがいながら

いつもびくびくオドオド上目遣いしながら暮らすようになる。

それからもうひとつは、逆にどうやったら人を従わせるかを学ぶ。

懲罰を使って他人を自分の思い通りに動かす方法を学習し

いつかは自分も罰を与える側に立とうと決心する。

権力に対しては従順だけど、反面弱者の前では

横柄に振舞う支配的なタイプだね。


前者のタイプは失敗を恐れ、ミスを隠そうとする。

今回の事故を起こした運転手や、オーバーランを過小報告した車掌は

まさにこのタイプなんじゃないかなあ。

それに当日事故車両にいたのに救助活動を行わず

出勤を優先した運転手が二人いたそうだけど、

彼らも、個人の道徳や良心より、

「罰せられなければ御の字」

という保身の気持ちに従って、会社に向かったのではない?

こういうタイプは、悪いことをしても、バレなければいいという

行動原理にいつかは従うようになるかもしれない。

そうなったらそれこそ反教育的だ。


また、マスコミの前で事故の弁明をしている

会社の偉い人なんかはきっと後者のタイプだろうね。

権力をどうやって使うかをうまく学んで出世してきたわけだ。

こういった人たちは、懲罰システムを自分たちの

権力維持の道具として利用したいから、

たとえ以前、自分が若いころに懲罰を受けたことがあったとしても

立場が変わったからといって制度をゆるくしたり弱めることはない。

管理し、さらに強化していく。

虐待を受けて育った親は自分の子供にも

虐待しがちなのと同じ理屈だ。


で、どちらのタイプの生き方を学んだにしても、

本来の教育目標からは遠い結果だ。

懲罰を使っても、社会に貢献しようという精神などちっとも育たないのだ。

つまり、

体罰や懲罰を使った教育は誤りだ。

今回の悲惨な事故は、臨床心理学者はじめ

教育学の専門家たちが口をすっぱくして力説していたことに対して

それが証明されたんだと言っていいと思うのだけれど、どうだろう。

たいへん悲惨な形で現実が理論に対して

お墨付きを与えたと考えるのは間違いかな。

もし、「日勤教育」について、その教育的意義や再発防止効果について、

JR西日本の社内に合理的な説明や理論的根拠を示せる

専門家がいるなら、意見をぜひうかがってみたいもんだ。

昨年、JR西日本の社内教育制度は

「合理的教育的意義が乏しく、懲罰目的と推認でき、

人権侵害にあたる」として兵庫県弁護士会から

改善勧告を受けていたというから、とても無理だとは思うけれど。

大惨事になってしまった今回の脱線事故から

ワタシたちが学ぶことがあるとしたら、

今後、この日本ではいかなる教育現場でも

体罰容認論や懲罰教育を認めてはならないということじゃない?

もし、それが存在するとしたら、権力維持のための

単なる方便にすぎないということをはっきり糾弾して廃止すべきだと思う。

教室だって、家庭だって事情はおんなじだ。

体罰を使うのは、もしかすると先生や親が、子供より偉いんだという

優位な立場を維持するために利用しているのに過ぎないのかもしれない。

しつけのつもりが、ただ、自分の思い通りに子供を

操縦したいだけかもしれない。

これを自戒して、改善していかないと、教室でも家庭でも

つまり大惨事がいつ起こるかもしれないということだ。

コワイなあ。





ところで、法事で数日故郷の山陰に出かけてきます。

しばらくお休みします。

 TOPページ   ランキング一覧   ご意見


イラスト・文章の無断転載を禁止します/著作・松村宏